叩いたことで発散したのか戻ってきた十束に怒り顔はなく、キッチンに行ったついでだとロールケーキと紅茶を持ってきた。
「お嬢様はこのままでいいのですよ。高校を卒業したい気持ちも分かりますが、卒業するまでにあるお嬢様の不安や苦労を思うと、胸が締め付けられる思いです。苦しみは全て捨ててください。周りを慈しむ気持ちから、自身の苦しみを無視するようなら――いっそうのこと、俺はお嬢様の苦しみの根源を爆破することさえやぶさかではない」
「それはやめてほしいですね」
ベッド横にあるテーブルで、一本のロールケーキをカッティングナイフで一個に切り分けた十束。
皿に置き、ラズベリーソースで飾る軽い手間を加えたあとに、朱耶に差し出した。


