「お嬢様……。そんな悲しそうな顔をしないでください。高校を卒業なさらずとも、これからの生活は俺が全てお世話いたします。何の不自由もさせません、お嬢様は自身の体調の回復に専念なさればいいのです。
それに、お嬢様を餌として利用する高校との決別に何を惜しみますか。生徒にしても、お嬢様を尊ぶ生徒の一方で邪な目で見る奴らもいることでしょう。
高校男子など聞くからに飢えた獣を思い出す。口に出すのもおぞましいですが、奴らはお嬢様という高嶺の花に対して、その花弁一枚一枚をひん剥いて、中を触りまくりたいと――っっ、思うだけで、壁を殴りたくなる怒りを覚えてきます。ちょっと失礼しますね」
そう言って、キッチンへと向かう十束は影でボコッと壁を叩いた。本当にイラついたようだ。


