空気清浄機が外のあちこちにある図を思い浮かべて、朱耶はくすりと笑った。


「十束(とつか)が言うならば、そうなのでしょうね」


やんわりとした微笑みに相応しい声音で賛同されたことに、付添人十束は、身を乗り出すほどに「そうなのです!」と賛同を重ねた。


「お嬢様は清く美しく、体から中まで全てが穢れない、穢れてはいけない高貴な存在なのですから、俗世間にわざわざその綺麗なおみ足で舞い降りることはない。

舞い降りる、とは比喩ですが、きっとお嬢様が歩く地は皆こぞって『天使が舞い降りた』を話題に、その場だけでなく記事の一面を飾るほどに俗世間が騒ぐでしょう。

お嬢様が踏みしめた地面に記念碑でも作り、『天使が舞い降りた土地』としてその縁起良さに人々は集まり、観光スポットとして栄える。そうしていずれは、お嬢様を独占したい輩の手によって、記念碑は盗まれ、また記事になるという……ええ、盗まれる前に俺がお嬢様記念碑を“保管”しますが、それだけお嬢様は俗世間とは無縁の天高き場所にいるような方なのですから、外には金輪際出ない方がいいです」