かつての友でも、死ねと頼めた。
一番に大切なのは“彼女”だ。会うために、抱きしめるために、ただそれだけの健気な願いがあって。
「たったそれだけの、ために……」
刹那、本が持ちかえられた。
瞬間、蛇の牙が全身に食い込む。
「あなたは人を殺したのですか!」
瞬時、ありとあらゆるものが白に染まった。
先ほどの焼き回しだ。辺り一面に溢れた光。日が昇ったかのような神々しさと、ああ、何よりも、温かい。
目をつむらずとも眩しいとは思わない聖なる灯火が、蛇を焼き消す。
光に呑まれ、砂塵のように消滅し、灯火が消えしときには何も残らなかった。
「っ、はあ……」
膝をつくイリイア。
体の熱があがり、息が荒くなる。蛇の毒がもう回ったか、意識も飛びそうだった。


