「芸がない、な」
それは、余裕の言葉。
聞こえたことに“これ”も不発になるのかと判断できたが――下げたものは取り消せない。
「残念だよ、イリイア。君の目が“この程度にしかならない”なんて」
至極、そうであると。哀れむ声のあとに、けたたましい衝突音。
椅子が弾けた。
長椅子で築かれた一種のアートが、子供に蹴破られた玩具(積み木)らしく決壊した。
スプガウスに当たる直前、“ぶわっ”と弧にひしゃげ、辺りに散った。
「くっ……」
思わず顔をガードしたイリイアの真横には椅子の残骸。弾き返された長椅子がところ構わず、降ってきたのだ。
とっさの防御にしてもなんて薄い。本来ならば、“精製ノ書”で、弾かれた椅子らを“押し返す”のが上等だが――そんな判断を下せないほどに、スプガウスの切り返しが迅速だった。


