「神を捨てたあなたが神の在り方を語りますか」
「捨ててなどいない。言ったはずだ、僕が裏切ったのは人間のみ。そうなれば、“捨てたのも人間”だ」
その言い回しに、イリイアはあることを感じた。
先ほどからある不信感。なぜスプガウスはこうも笑っているのか。
殺人とは大罪。
聖職者でありながら罪を犯すとは、神を捨てたと同じことなのに、スプガウスの話しからして彼は先ほどから“神はいるものとして”話を進めている。
善の象徴(神)をいると認識しているならば罪悪感に苛まれているはずであり、何よりも、これから裁かれる者の口振りではなかった。
何をしても許されると思っているのか、自分はそれだけ神に愛されていると確信しているのか――あるいは。


