カトリックとプロテスタントなんて十字架にキリストが磔られているかいないかに過ぎないにせよ、カトリックたる女からすれば、わざわざプロテスタントを名乗る男の心境が理解できなかった。


――いや、そもそも、理解などしたくなかったのだ。


「神に仕える身だとあなたは自分を称しますが、あなたは悪だ。誰の目から見ても、完璧なる悪。まさか、覚えてないわけではないでしょう?」


教会に入ったときから感じていた。湿り気に鉄を含ませたそんな――腐った血の匂いを。


忌々しげに瞑る瞼に力を入れて、女は嫌悪を表した。


顔の部品が一つ欠けても表情は分かるんだなと、男は“笑い”――