――意識しすぎか。


本当に今更ながら、だ。彼の匂いなどよく知っている。


硝煙の匂い。
それは彼ではなく、彼の服に染み付いた匂いにせよ、ミナナの中では彼はそんな匂いと認識している。


時折、血の匂いも交えてきて――普通ならば眉を寄せよう嫌な匂いでも、ミナナにとっては別段、気にせず。“我が家の匂い”と嫌悪することはなかった。


ミナナもそう、彼と同じ匂いが“こびりついている”。


――落ち着くのか、やっぱり。


彼を好きなのかは曖昧にせよ、落ち着くと言えば落ち着く。


だから手離すことはないのかと思っていれば、彼がミナナの隣に再度、座った。