刻みたいまではいかなかったものの、彼のタトゥーを初めて見たとき、『素敵だなぁ』と見とれたのは事実。
名前を取れば、想像の美。幻想を唯一表せる絵は羨む気持ちをぽつぽつ湧かせた。
「ミナナ、本当に貼らない?わざわざオーダーメイドで作って、大きさ形も色さえも同じに、俺の名前入りでミナナが喜ぶ物だと思うんだけど」
「いりませんよ」
「そっか……」
尻尾垂れた犬みたいにしょぼんと、あからさまに残念がっても、ミナナがいらないと言うならば、いらないんだ。
「次は別のいいものを持ってくるよ」
言って、惜しげもなく彼はタトゥーシールをゴミ箱に捨てた。


