「どうしたの?」

「あかね!?」


声を掛ければ、昶は驚いて声を上げる。
それに反応するかのように側にいた駿や結祈は振り向いてあかねと朔姫を見る。
声には出せないものの昶と同様に驚いた表情を浮かべていた。


「おまっ……なんでいんだよ!」

「喉が渇いちゃって。だから朔姫と食堂に」

「そんなのオレが持ってくから!な!?部屋に戻れって!」


何故か慌てた様子で詰め寄る昶。
まるで視線の先にある何かを見せないように視界を遮り、無理矢理にでも部屋へ押し戻そうとする様子にあかねは戸惑う。


「ちょっ…いきなりなんなの?ってか近過ぎ!どいて」

「っ!?」


不可解な行動が煩わしくなって、昶を押し退けて前に出る。


「ーー」


その瞬間目に映った光景に、あかねは言葉を失う。


「やぁあかね嬢。私が贈った服着てくれたんだね。とてもよく似合っているよ」

「あ、アーネストさん……」

「悪いけれど、今は昶の言う通りにしてくれるかな。いとけない君には、これは酷過ぎる」


徐々に顔を青くしていくあかねに、アーネストはいつものように優しく微笑む。
だがおかしなことに、彼の服にはところどころに赤黒い滲みが出来ていて、それが血痕であると気付くのにそう時間は掛からなかった。
そしてそんな彼が抱えていたのは、ぐったりとして俯いたまま意識のない血まみれの男だった。