なんだか、可哀相な話だった。


 何かしらの思いが成就せぬことは、大変重い悔い。それを残したまま、莢は死んでしまったということになる。


 なんだかんだ言って、莢のことを一番に考えて――その幸せを願っていてくれていたのは、天冥ただ一人ではないか。


 天冥がそれを口に出して言わないのも、今なら分かる。


 外道は、そのようなことを言える立場ではないと思っているからであった。



 明道はつい、ポツリと言葉を漏らした。


「想いがわかっているならば、抱いてやればよかったのに・・・」



 ――ガッ・・・!!


 明道が呟いて数える間もなく、天冥が明道の胸ぐらを思い切り掴み上げた。
  
 細い腕のどこにそんな力を秘めているのだろう、明道の体は小さく持ち上がった。


「ふざけたこと言いおって」


 明道は目を瞠った。

 天冥が初めて本気の怒気を露わにしたからである。


「なぜだ、なにも悪いことは――」

「お前らの常識からすれば、それは確かに悪くないかも知れぬ。だがなぁ」


 天冥の目は、充血して赤っぽくなっている。天冥は手をのろのろと放した。


「俺は・・・常識の枠にいる人間ではない」


 そう、人の道から外れた『外道』という部類の人間だ。