「――それも、ある」


 さすがの天冥も道満には口で敵いそうにないようで、いつものように威勢よく言い返す素振りは見せなかった。

 天冥の様子をしばらく見つめていた道満は、急に明道に目をやった。


「藤原 明道殿よ」


 後ろに何かざわつくものを纏いながら、道満は言った。


「人柄なら俺の耳にも入っておる・・・今時珍しき正義の人との」

「いや、私は単に――」

「息子や娘、身内を助けたかった?命あるあの山を救いたかった?そのどれかに関係しておることじゃろう、ぬしが幻周に抗う目的は」

「・・・っ」


 まさにそう、大当たりである。

 もしかすると、人の心を知ると言うことは、天冥よりもうわてかもしれない、この男。