「明道、少しばかり下がっておれ」

「何を、するのだ?」

「宣戦布告さ」


 そう言い、天冥は呪符を取り出し、指で挟んだ。

 邪魅たちの周りに灯る鬼火にその呪符を投げつけると、呪符が燃えて小さな火が出る。見計らうように、天冥は鋭く言い放った。


「ソワカ・スイリュウテン・オン!」


 天冥が唱えたのは防炎術(ぼうえんじゅつ)の逆さだ。普通、防炎術は「オン・スイリュウテン・ソワカ」と唱えるべきだが、それを逆さに唱える。

 つまり「防炎」が「業火術」となるのだ。


 いや、天冥の場合はその程度ではない。

 
 炎を強める上に、操る事ができるのである。


 鬼火から上がった小さな火が、音を立てて燃え上がった。不規則に炎が中を舞う。天冥の頭の中で練られた想と同じように、炎がうごめく。

 天冥が手を上に突き出すと、炎も同じように上に突出した。


「なんじゃ」

「炎かっ」

「たれぞ、方術で炎を操っておるな」