GEDOU―樹守る貴公子―



 一瞬、明道の中に『天冥は農民か平民だったのではないか』という考えが浮かんだ。

 ただ気になることがいくつかある。

 農民だったなら、なぜこのような姿で、民間陰陽師として京に来ているのだろうか。


 家族は?

 出で立ちは?


 天冥の過去について、何一つ分からない。


 ただ何故か「聞いてはいけない」と明道の中の何かが叫んでいた。


 これは、本能と虞(おそれ)だ。


 天冥の過去について聞く事は、彼の中の何かを削る事になる。

 天冥が今までしてきた事以上に恐ろしい事をしてしまう―――そんな虞だ。


 しばらく歩くと、天冥は足を止めた。


 木が生えておらず、小原が円を作って光が上から注ぎ込まれている。

 天冥はその右端まで歩くと、ふとそこで立ち止まった。

 そこには一本の、種を植えられてから数年しか経っていないと思しき木が生えていた。


「これは・・・桃?」


 破邪の力を持つとされた、桃だ。