「・・・意外と、いい奴だな。天冥は」 「たれが良い奴じゃ」 「外道の貴公子とは聞いておったが、そう聞くほど悪い奴でも・・・あだっ!」 ばつが悪そうに天冥は軽く明道の脛をごついた。げしっ、という音がする。 「ひどいぞ天冥、褒めたつもりなのに」 「俺にとっての褒め言葉は『外道』とか、そういう言葉ぞ。優しいとか良い奴とか、そういうのは罵り言葉にしか聞こえぬ」 あたかも吐き捨てるような語調であったが、その顔にはどこか嬉々とした様子が浮かんでいた。