「罪無き女子供にも容赦が無いそうな」 「おー、怖い」 いらっ。 兎の妖の言葉に、天冥はキッとそれらを睨みつけた。 「勝手にぬかすな!殺すぞっ!」 「ひぃぃ」 ばたばたと音を立てながら妖達が逃げ去っていく。 「・・・ちっ」 天冥は築地の壁に背を預け、座り込んだ。煌々と月が不気味に光っている。ひんやりとした空気が天冥の身体を、着のみ着の夏蜜柑色の狩衣を通してしみこんでくる。 首から垂らした小さな薄い布で作られた袋を握る。 これを握ると、いつも荒々しい心が鎮まるのだ。