おいおい、なんだか外道と話が会ってきてるみたいだぞ。

 話していて明道は思う。


「だが・・・その渾沌が本物でないのなら・・・」

「お前の手で、幻周を?」

「うむ・・・」


 馬鹿な奴じゃなぁ、と天冥は思った。

 無茶をするというか向こう見ずというか、だ。


「だいたい、その山になぜそうも執着する」

「思い出だ」

「思い出・・・」

「今は亡き妻に出会ったのもあの山、息子に一番最初に見せたのも・・・あの山だ」


 とくん、と何かが天冥の中で脈を打った。

 清流に似た何かが、ゆっくりゆっくりと時間をかけて心臓に流れ込むような、そんな感覚である。


 明道が息子を持ち上げ、山を見せる情景が思い浮かんだ。

 そして次に思い浮かんだのが、肩車をしてもらって空を眺めた幼い自分と。


『どうだ、綺麗だろう?』


 笑いながら言ってくれた、父の姿―――。