「・・・山だ」
「山?」
「桂川が近くにあって、木辻大路や道祖大路に面しておる山だ」
天冥はそれを聞き、ピクリと反応した。
例の桃の木が植えてある山――幻周と思しき男が『邪魅に渡す』と言っていた、山だ。
天冥が京に来るたびに足繁く通っている、あの山。
「・・・その山を、邪魅から守るために?」
天冥が言うと、明道が顔を上げた。
「し、知っておるのか?」
「邪魅の話は、聞いただけじゃ」
「そのとおりなのだ、天冥」
「やはりか」
明道はふと気付く。
この男、自分がいない間にそのあたりのことを依頼で掴んだのだ、と。
「父上は――多分、幻周を恐れていたのだ」
「そうじゃろうな」
「父上と絡むようになってからだ。幻周が・・・あの山を狙いはじめたのは」
「ふぅん」
「幻周は・・・あの山を何かに利用しようとしておる・・・」
「少なくとも、山を自分のものにしたいわけではなさそうじゃ」


