「悪いことを言うが、これには渾沌に匹敵するほどの呪力はこもっていなかった」
「何だって?」
「方術が使えるなら、込められた呪力を感じ取れて当然じゃ」
「―――」
「渾沌は唐の大妖怪。呪力も背筋が凍るほどあるが、この像からはそれほどの呪力は感じ取れなかった」
「じゃあ、これは・・・」
「まぁ、渾沌に似せただけの魔除けということになるな」
この男は嘘を付いていない。明道は分かった。
なぜなら、天冥の表情があまりにも退屈そうだったからである。
もし騙すつもりなら、少なからず表情に変化があるはずだ。
「・・・・っ」
明道は、突きつけられた事実にうつむいた。
「・・・わざわざ、唐まで行って手に入れたというのに・・・」
「そんなの、噂につられて手に入れるほうが悪い」
うつむき気味になっている明道に、天冥は容赦の無い言葉を口にする。
「おおかた、その渾沌を呼び出して幻周に太刀打ちするつもりだったのじゃろう」
「・・・そうだ」
「もしその像が本物だとしても、そんな事をしたって、結果は同じじゃ。
幻周を倒す事ができても、明らかに悪人ではないお前に呼び出された渾沌は、怒り狂うだろうよ」


