GEDOU―樹守る貴公子―




 渾沌(こんとん)―――唐の『荘子』に伝わる四凶という人に害をもたらす妖の一つである。

 全体的に犬のような姿をしており、脚は熊に似ている。

 目、耳があるがどれも見えず、聞こえもしない。

 その性質は『善人を嫌い、悪人に媚びる』だという。

 四凶はこれ以外にも『キュウキ』『トウコツ』『トウテツ』がおり、いずれも善に当てはまるものとして伝えられていない。



「この像の中には、渾沌が封じ込められているという」

「ふぅん、妖の中でもひと際強い四凶がねぇ。そんなにもたやすく封じ込められるのか」

「聞いた話だ」

「で、唐まで行って来てやっとこさ手に入れたのがこの像か」

「そうだ」

「はぁ・・・。そういうことか」


 天冥は古びた小さな箱から渾沌の像を取り出し、明道の前におく。