「これは、あなたがたの物で?」
丁寧な口ぶりだったが、そこに敬意と言ったものは何一つ含まれておらず、むしろ侮蔑の想いすら込められていそうだった。
「あ、ああ・・・」
言うやいなや、男は鞠をこちらに投げてきた。
それを手で受け取った明道は、反射的に「ありがとう・・・」と慣れたようにも聞こえる声で言った。
「いえいえ・・・」
怪しげに、そして不気味に笑って扇で口を隠すが、男はすぐに扇を下ろした。
そして瞳孔を見開き、明道を凝視する。
「お前・・・どこかで」
ぼそり、と男はそう呟いたのであった。
「?」
明道が首を傾げると、男は我に返った様子で、馬鹿馬鹿しいとばかりに鼻を鳴らすが如く息を吐いた。
背を向けた男のどこか閑散とした背は、すぐに遠ざかって行く。
つい、声をかけたくなった。
「そんなに悲しい様子に、ならんでくれ」
あれ、なんだか言った覚えがあるぞ。ふと思う。


