GEDOU―樹守る貴公子―




『この――を味方につけたということは、安倍晴明を味方につけたも同然ぞ』


『安心しろ』


『俺がついてる』


 なんていうんだろう、どこか言い返したくなる声色、語調だ。


 聞き覚えのあるが、どこで、どんな意味を込めて、だれと話したのかがわからない。



「・・・まぁ、いいか」


 明道は庭に出ると、門の近くで妹と戯れている息子を見つけた。


『早うしろ、明道っ!』


 自分と知り合っている貴族や貴公子、誰一人として人をそんな乱暴に呼んだりなどしない。


「父上ぇ、はやくー」


「ああ、分かった」


 せっかちだなぁ。ま、いいか。


 苦笑して向かおうとしたとき、息子が蹴った鞠があろうことか築地を乗り越え、外に出てしまった。


「わっ」