「少し黙れよ」


 天冥は笑っていた。

 しかしその瞳に灯っていた炎は笑みと言えたものではなく、必殺の意を濃厚に含んだ殺気で燃えるものであった。


「――やれ」


 一斉に邪魅が飛び掛った。

 天冥は不敵に邪魅を見やる。


「オン・フン・ユウノウ・ハラバヤ・ソワカ」


 むぉん、と空気が揺れる。

 悪意に満ちた邪悪の覇気が天冥を包み込み、守る。しかし見間違いだろうか、所々に白い斑点が光っていた。

 そのまま片手の剣印を横に振った。


「斬掻!」


 紫色の軌跡を描き、研ぎ澄まされた鋭利な呪力の刃が舞い、当たった邪魅の肉を引き裂く。

 しかし、その間から入ってきた邪魅の爪もまた、天冥に届き左腕の皮を裂いた。

 ぐぱっ、と腕の傷は綺麗なほどすっぱり切れていた。


「やるではないか小物の分際で」


 天冥はそう吐き捨てた。