「させぬ!」


 明道はぐわりと言い募った。

 からからと邪魅がけたたましく笑う声が森の中に響く。


「そなたに何ができる」

「何もできずとも、足掻かねばならぬ」

「馬鹿め、力無き徒人にできる事なぞ、ない」

「力がなんぞ!」


 明道は力の限り言ってのけた。


「晴明の悪点と言う少年にしても、何もしないでいるわけではない」

「・・・」

「ほんの日進月歩でも、歩んでいれば、小さな動きでもしていれば、何もせぬものよりも『光』に近づけると言う事さ」

「お前が足掻いておれば、天冥が我々を皆殺しにしてくれるとでも?」


 かこぉんっ。

 明道の蹴った小石が幻周の真横を紙一重の差で横切り、向こう側の太い木に当たる。

 ぉん、ぉん、と木霊していく。


「まだっ」


 明道はもう一度幻周めがけて石を蹴った。

 かこぉん。

 またも聞こえの良い音が闇夜に響く。