「安倍 晴明と同じ名を持つ少年だが、呪力の力は桁違い、足元にも及ばぬほど弱いとか」

「――」

「それと同じよ。あの渾沌の像は」

 
 幻周はぬるぬると蠢く邪魅達を舐めるように見やって、口元に刻まれた皺をさらに深くした。

 
「なにをしておるのだ幻周よ」

「その人間、見鬼の才を持っておるぞ」

「美味そうじゃ」

「くろうてしまえ」


 邪魅達がぞわりぞわりと明道に寄ろうとする。しかし、それ以上は踏み入ってこない。


「まぁ待て」


 幻周が言った。


「天冥が来るまでの辛抱じゃ。さすれば、人の肉であろうと神の魂であろうと、いくらでもくれてやろう」


 人の肉、と聞いて明道はいきり立った。それが家にいる子供たちの事を指しているように思えたからである。