三河の槍使い





押しこめられた部屋に朝日が差し込んできた。



夜が明けてしまったらしい。





──そういや、とよの夕飯を食べ損なったな。

作ってくれ、と頼んだのに、本人が帰ってこなくて心配しているかもしれない。





完全にはふさがりきっていない胸の傷に疼きながらも、源九郎はゆっくりとした動作で起き上がる。


おまけに何故か手裏剣を作る石で半蔵に殴られ(?)た額もじんじんする。




だがしかし、帰らなければ……。




──またとよが泣いちまうもんな。



一見誰にも媚びを売ろうとせず、強靭な精神を備えていそうな彼女だが、その心の内は儚くて脆い。


自分がこの手で支え、守っていかなくてはと考えてしまう。




だからそんな自分がこれ以上に彼女を心配させてはいけないのだ。




「世話になった、伊達殿」




一応この城は彼のものなので、挨拶をしてみる。

当然ながら伊達政宗が聞いているわけではないが、何となく満足したのでこれでよしとしよう。









門から出ようと足を踏み出したとき、



「お帰りですか?」