「……確かに、そりゃ俺に非があるな」
「わかればよいのです」
──自分のこういうところが家康の気に障ったのかもしれない。
否応なしに認めざるを得ないこの状況に落胆する。
一方的な眼差しは邪魔だった、ということだろう。
「とりあえず、伝えました。この後家康殿の役に立つかはお前次第です。」
源九郎が肩を落としているのにも関わらず、半蔵は淡々と告げる。
「ただし、役立たずになり墜ちるならば──」
「……」
「──その時は殺すまでです」
そう言い残して半蔵は勢いよく飛び上がり、いつから開いていたのだろうか天井の穴へ吸い込まれるようにして消えていった。
──殺す、か…。
あれが消えていった穴を見上げながら源九郎はふっと笑う。
金を貰っているからかもしれないが、自分より余程主思いではないか。
いや、そう命を受けているだけかもしれない。
しかしだとしても、あの何が何でも命じられたことを遂行する完璧な忍者に家康は買っているのだろう。


