三河の槍使い







「そう、その政宗に領地を広げるように加担しろ」





家康の声が一気に低くなった。






「信長様はあのご性格ゆえ、いつかは討ち死にするのではないかと思うておる。さすれば儂はその先、またその先を見つめなければならぬ」





「伊達政宗を配下に収めると?」





「うむ。左様じゃ」







源九郎は家康と半蔵のただならぬ殺気を感じた。






「使えぬような輩であれば、殺せ」





「御意」






半蔵は一礼してからさっと姿を消した。



その姿に満足げに家康は頷く。






「あやつはよぅ働いてくれるの」





けらけらと笑う家康に源九郎は顔を伏せる。







「……しかし、あれは心が読めませぬ」




─────半蔵が醸すのは合間に見える『雰囲気』のみ。

源九郎はそれをかろうじて感じ取るだけだった。






家康は黙って頷く。







「……俺ぁ、あれが気に喰わねぇ」




ぽつりと呟いたのは家康に向かって言ったものではない。


そのことも含めて家康は何故か満足に腹を擦る。






源九郎はそんな家康に目を細めながら睨んだ。