こちらに顔だけを向け、正座をしている男。
「てめっ…、半蔵じゃねぇか」
「はい。半蔵です」
しれっとしながら何の感情も表さない、いつもの半蔵だ。
強いて言うならば、ただでさえ小柄なのが正座をすることでさらに小さく見えるぐらいだ。
「よかったですね。目を覚ましてくれました」
「よかったって……。その手に持ってるやつはなんだよ」
まだじんじんと疼く額と半蔵が握る怪しげなものとが関係があるのではないかと思うのは考え過ぎだろうか。
だが、相手はあの半蔵だ。
殿の金平糖を盗むほどだからこのくらい…──
「これですか?これは鋼鉄です。後に僕の手裏剣になってくれます」
「ふ、ふざけんじゃねぇよ!危ねぇじゃねぇか」
「何を勘違いしているか知りませんが、“まだ”鋼鉄ですよ?謂わば鉄の塊というだけです。それを腫れ物を扱うが如く悪者扱いしないで欲しいですね」
「その鋼鉄さんに頭を破壊されそうになったんだよ!」
あらあら、と言いながらさして心配していなさそうに半蔵は口元に手をあてる。
本当に何がしたいんだ、こいつは。
いつも感情が皆無のあの顔からはひと欠片も心情を読み取ることはできない。


