──…この方は、私の考えていることを全て理解していらっしゃる。




「全て勝てば良い話ではない。お前に必要なのはその心よ。今の気持ちを忘れるな」





「はっ!」




ひとまわり小さい目の前の男に小十郎は改めて忠誠を誓うことを心に決め、頭を下げた。





「お前が悔いるほどの使い手なのだ。源九郎は使うことにするぞ、小十郎。いいな」




「……承知しております。政宗様の仰せのままに」




「うむ。それでよい」




政宗は満足そうに笑い、それから付け加えて言った。





「源九郎の傷を診てやったら目覚めるまで屋敷に置いとけ。こいつの精神力なら今日中に起きるだろ」



「かしこまりました」






そうして、源九郎は城近くの屋敷へと移されたのだった。






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目の前に女が泣いていた。




とよだ。




涙を浮かべてこちらへ必死に何かを叫んでいる。



ああ、やっぱり泣かせちまったか…。





源九郎は胸の傷に手を当てた。



む?



あからさまにおかしかった。

なぜなら、痛くないのだ。


あれほどの傷で、小十郎に返り血を浴びさせるほどの出血だったはずなのに、不思議と痛くない。