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「政宗様。終わりましたよ」
源九郎がゆっくりと目を閉じた後、どさっと倒れこんだ。
それを確認して、小十郎は刀を鞘に収めた。
「うむ。……いや、源九郎には冗談としてお前の秘技を伝えたつもりだったが、俺が嘘をついたと言わせないためにその太刀を振るったのか」
「いえ、全力を出さなければ私は負けていたでしょう」
「なるほど」
小十郎は瞳を伏せ、余韻に浸る。
本当に危なかった。
小十郎自身として自分を許せないと感じたのはあの三段階突きだ。
なぜなら、
あの第三撃は────
「避けられたのは、まぐれでした」
二撃目で左に避けた際、たまたま身体の重心を傾けた。
その時首を曲げたところに源九郎の三撃目が繰り出されたのだ。
まさか三撃まで突いてくるとは思わなかった小十郎は失態だと後悔している。
たまたま生きている、ということは武士にとっては恥である。
小十郎は左手に収まっている鞘をぐっと握り締め、また奥歯を噛む。
そんな姿を見た政宗は息を大きく吐いた。
「あまり思い詰めるなよ、小十郎」
「えっ…」
突拍子もなく発言した政宗の言葉に小十郎は何事かと彼を見上げた。
縁側に腕を組んだ状態で立つ彼は小十郎を何ともない顔で見ている。
小十郎と政宗の距離は表情が分からないぐらい離れているわけではないのに、読み取りにくい。
しかし、小十郎は政宗の意図を悟った。