「あんまり俺を見くびるなよ」
「………っ!」
夜叉の瞳が源九郎の殺気に一瞬怯む。
しかし次にはきちんと態勢を立て直すのがなんとも小十郎らしい。
「私だって…!容赦はしませんっ…!」
小十郎が言い終わる前に今度は源九郎が後ろ足を蹴った。
源九郎は槍突きを三段階に渡って繰り出してくる。
最初は右肩を、次には右腕、最後を顔を狙われた。
まずは刀を握らせないのが相手の意図だろう。
浪人と言うくせに、何とも武士臭い。
あれは戦で常識とも言える技だ。
小十郎は二撃目までは避けたが、三撃目を右頬に食らった。
「……」
「どうだい、色白男さんよ。この槍の切れ味はよ!」
小十郎の頬からつうっと血がしみ出て、垂れる。
「…………嘗めるな」
まがまがしい雰囲気を背後で漂わせながら、またも夜叉となる小十郎。
大きく飛び上がり、弧を描くように空を跳んでその加えられた重さを頼りに源九郎へと刀を振りかざす。
───こいつ、真正面からぶった切ることしか能がねぇのか?


