三河の槍使い





「源九郎、ひとつ教えておいてやろう」



小十郎を見据える背後で政宗の声がした。





「あやつの太刀は獣同然よ。斬られたところから獣の爪痕のように裂ける。気を付けろ」



「は、はあ?!獣って、一体どういう…」



「油断は禁物ですよ、源九郎!」




刹那、小十郎の顔が前にあり、大きく刀を振り下ろされた。




「くっ……!」



源九郎は間一髪のところで槍の刃先で食い止める。



それから小十郎との間をあけるために飛び退いた。





「…へっ。色白の優男だと思っていたが、結構やるじゃねぇか」





槍の刃先が若干ひび割れた。




毎日突いている槍が今どのような状況なのか、感覚で覚えている。






───こいつは、ちと…やべぇかもな。





こんなに強い奴は久しぶりだと、身体がウズウズしている。




この勝負は五分五分だが、それ以上に自分が成長できると確信できる。






───楽しい方がやりがいがあるってもんだ。






目の前の男はまるで氷のような冷たい瞳で自分を見下している。



血で汚れたときのように刀を一振りして何かをなぎ払う。


その姿は夜叉のようだ。