三河の槍使い






「これは我が主の父上である輝宗様が飼われている鯉ですぞ!勝手に触らないでほしいっ!」





あの色白の肌とは相容れないほどの大声で小十郎は叫んでいた。






こいつはもう少し大人しい性格だと思ったが、そうではないみてぇだな。





そんな風に源九郎は内心思った。




憐れんだような目で小十郎を見ていると、少し幼さの残る声が縁側より聞こえてきた。





「よいよい。その鯉たちも父上の気まぐれで飼われたものだ。特に大事にしているわけではない」



「しかしながら…!」




「よいのだ、小十郎」




強調された声に小十郎は歯がゆいとでも言うように唇を噛む。


そして一旦目を閉じて心を沈めながら大きく息をついた。





次に瞳を見せた時にはもう、心を乱した彼の姿はなかった。






「では政宗様。この者の相手は私にさせて下さい」




明らかに目の色が変わった小十郎に向かってふっと笑いながら政宗は刀を放り投げた。




「はなからそのつもりよ」




彼が笑ったことにより何かを得たような企みの笑みを小十郎も溢す。



そんな二人を見て眉を寄せながら源九郎は槍を上段に構えた。





「話はついたかい、お二人さんよ」




「そうですね。後は貴方を倒せば全ての話が終わります」





「へっ!そう簡単にやられてたまるかよ」