三河の槍使い





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俺は城の中庭らしい所に連れて来られた。



少し待っていろと小十郎が言ってどこかへ消えてしまったので、手持ちぶさたとなった俺は近くにあった池をしゃがみ込んで覗いた。




そこには何とまあ、お上品な鯉が泳いでいたわけで、



そういえば殿もこんな鯉をいくつも飼っていて、よく金平糖を餌としてあげようとしていたのを家臣らに止められていたことを思い出す。




何だか懐かしくなる。



殿の命令とはいえ、急な話だったので親しい仲間に何の別れも告げずに去ってしまった。




元気にしているだろうか。








彼らの顔が鮮明に思い浮かび、つんと鼻の奥へと引っ張られる感覚に陥ると、誘導されるように涙が瞳に浮かぶ。




源九郎はずびっと鼻を吸ってから、男として恥ずかしいことをしてしまったという後悔を紛らわすために持っていた槍を池に突っ込んで乱暴に掻き回した。








急な波乱を伴うような水面に鯉たちが何事かと口を付ける。







「な、何をしているっ!?」






慌てふためいた鯉たちに微笑みを洩らしていた源九郎の背後より、先ほどの声が聞こえた。






振り返ると小十郎が袴着を着てこちらをぱくぱくとさせながら指指していた。