その瞳は冷えていた。
とよの瞳は震える。
「お前は黙ってオレに抱かれてればいいんだよ」
健造の細い指がとよの頬に触れようとする。
「ひっ………!」
怯えたとよの声に一瞬退いた指だったが、何の躊躇いもなくそのまま頬を撫でる。
その指は骨格をなぞり、とよの小さな顎を捕えた。
「オレはお前が欲しいんだよ。……何故だかわかるか、ん?」
彼我の距離はほぼない。
少しの振動で互いの唇が重なってしまうほど接近していた。
健造は小首を傾げる真似をする。
その姿は人を騙そうとする狐のように笑っていた。
「お前を、愛してるからだよ。とよ」
軽く触れる程度の場所で、彼は厭らしく口を鳴らす。
そっとその距離を遠ざけると、健造は妖しく舌を舐めずり回した。
「この続きは、初夜で…な」
その舌は蛇のように細長く、その目は狐のように切れ目である。
添えられた指先は死んだ魚のように冷たく、囁かれた薄い唇はアヤカシのようだった。
だから捕まれた腕を離された瞬間には、とよの足元はすくみ立てなくて、どさっと崩れ落ちる。
しかし今回は健造が手助けするようなことはなく、膝をついたとよが恐れた目で見上げれば、何の熱も帯びていない瞳で彼は見下していた。


