全ての女子は自分に必ず惚れるという自信が彼をそんな顔にするのだろう。
とよの素っ気ない態度に亭主は叱責しようとしたが、健造は平気だと言わんばかりに亭主に手のひらを見せた。
外見菩薩のような口調や仕草に亭主もそれ以上言えないらしく、口をつぐむ。
「ではなるべく早い方がいいですよね。どうでしょう?三日後、というは」
とよの態度とは裏腹に、着々と結納の件は進んでいく。
その進行の早さに何もできない自分がもどかしかった。
────心配するな、
ふと、そんな声が聞こえたような気がした。
今でも覚えているその温もりが今、異様に恋しかった。
見上げた先には温かな微笑んだ彼の姿を思い出す。
自分よりは少し年上だろう。
何より乱れた自分を冷静に対処したあたり、自分と異なる差が歳の差とでも言えるに違いない。
きっと、綺麗な奥方がいるのでしょうね。
自分の歳でさえ結納は遅いと言われているのだ。彼はきっと愛する人がいるだろう。
しかし、何故だろうか。
自分など、綺麗でも可愛らしくもないのに、その会ったこともない奥方に対して疎ましく思ってしまう。
あの人の大切な人だったら、今隣にいるのがあの人だったら…。
結納を交わすのが、あの人だったら───


