三河の槍使い






─────まあ、だから重宝されてるんだろうな。






半蔵は家康が雇った伊賀者の中でも一際重要な任務に従属されていた。





小柄で無表情の半蔵はまさに忍の根本的なものと言えよう。







「しかし、家康殿は遅いですね。どこかで女に声を掛けて歩いているのでしょうか?」






「さあな。殿に限ってそれはねぇだろうよ。奥方がうるせぇだろうしな」






かれこれ数刻はこの状態だ。


さすがに源九郎も手足の痺れが現れ始めた。






「僕が呼んで来ましょうか」




「は?」






そう言って半蔵は一瞬にして消え、そのすぐ後に襟首を掴んで家康を連れてきた。




勿論、拘束した縄は解かれていた。





家康が来るまで密かに逃げようと縄紐に四苦八苦していた源九郎は何事もなかったかのように普通に紐を解いてしまった半蔵を見て苦く笑うのだった。










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「うむ。すまぬのぅ。金平糖のありかを変えていたらすっかり忘れておったわ」




まんまると太った腹を豪快に叩いて家康は笑う。





こんなときでも好物のことか、俺らの殿様は…と半分呆れかえっているのに対し、半蔵はまた無感情で笑って言った。