おかしい。
距離が縮まって自分の方が背において見下すような立場にあるはずなのに、何故か半蔵より劣っているような気がする。
どうして気圧される必要があるだろうか…
半蔵はいつもの無表情の瞳で源九郎を見上げた。
「明日、伊達政宗と会うのでしょう?」
「……………そうだ。俺は、まだ殿の役に立ちてぇんだ。伊達本人に会わせてくれるかはわからねぇが、それでも……」
「本当に尊敬しているのですね」
半蔵が肩にかかった布を掛けなおす。
「家康殿も、忠誠深いお前を失うとは勿体ないことをしますね」
「……………何が言いたい」
そもそも二人が策略して事を起こしたのではないのか。
訝しげに見下す源九郎に向かって、半蔵はまたも妖しい笑みを浮かべた。
「半蔵……っ!」
その笑みが気に入らなかった。
全てを知っている上で何も言わず、踊らされている自分を愉しそうに見るその姿が。
源九郎はその襟を掴もうとした。
「……………っ!」
しかし、半蔵の立つ地面から土埃が立ち、源九郎が目眩ましをくらっていり間にそこに存在は消えていた。
標的を掴めなかった源九郎の手は空気を掴むだけで、その虚しさに繋がる腕に一つの筋が浮き上がる。


