あの時の半蔵の眼は眩しいくらいに輝いていて、源九郎は金平糖の山盛りの上に何があるのかを言えなかった。
源九郎が躊躇っていた直後、半蔵は走って金平糖を手に入れ、上から頑丈な籠が落ちてきて難なく捕獲された。
これも信長から頂いたものなのか、南蛮由来のものだとすぐにわかった。
源九郎は出してやろうと籠に手をかけた瞬間、家康の頭突きが源九郎の背中に命中し、気を失ったところを捕獲。
「………まあ、あの間抜けな顔して捕まった源九郎なんて滅多に見ないから、上出来ですね」
「何が上出来だ。こうやって捕まること事態、最悪じゃねぇか」
二人は仲良く腕を拘束され、家康がやってくるのを待っていた。
─────…半蔵はくえねぇな。
源九郎は内心そう思っていた。
小柄な身体の割に源九郎とはあまり年の差はない。
せいぜいひとつかふたつ下なだけだったと記憶している。
こうやって敬語を使っているから感情はあまり出さない。
全ての言葉はこの敬語によって包まれて、本心を隠そうと撹乱させているのだ。
無表情に紡がれる声に抑揚はない。
金平糖に目が行ったときも、輝いて見えたのは源九郎が感じた瞳の雰囲気であり、彼の表情が変化したわけではない。


