「………しかし、なかなか見つからねぇな」
しばらく歩いているが、槍を振り回せる広い場所は見当たらない。
─────明日のためにも少し体を動かしたかったんだがな…
源九郎は朝から政宗のもとに向かおうとしていた。
もし雇う際に槍捌きを披露せよと命令されるのならば、完璧にこなさなければならない。
どうしようかと歩みを止めてうなっていると、
「………………ん?」
どこか遠くから声が聞こえてきた。
─────前方…
源九郎は白くもやのかかった道の先を凝視する。
そこに小さな人影が蛇行しながらこちらに近づいてきているのがわかった。
「あれは、もしや…」
源九郎は咄嗟に物陰に隠れて息を潜めた。
「………………れ。金を、くれ…」
その声の持ち主は幼い少女だった。
声はかすれており、まるでその姿は亡霊のようであった。
「あれが男に迫るという女、か…」
まだ小さいじゃないか…───
ぼろぼろになった身体を庇いながらそれでも捜し回る姿は何とも痛ましかった。
「なんでもするよ…、だから─────」
なんでもする、とは本当に何でもしてきたとでも言うようで、源九郎は彼女に気づかれないまま物陰から姿を消して先に進んだ。


