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まだ朝日の昇らぬ城下の道を、源九郎は長年使ってきた槍を手に、適当な場所を歩き回っていた。
無論、鍛練をするためである。
────しかし、とよもとよだぜ…。
草鞋(わらじ)を履いているときにまさか飛び掛かってくるとは思わなかった。
強そうな雰囲気を昼間は出していたが、案外何かを抱えていて、それと重なってしまったのかもしれない。
源九郎はその元凶とも言える槍を見つめてふと笑った。
「確かに、こんな槍じゃ勘違いするよな」
誰の血ともわからないものが、しみ込んでいる。
『かつて』は紛れもなく武士だったのだ。
もう数えきれないほど人を殺(あや)めてきた。
それが誇りであった自分は今、どこにもいない。
むしろ、とよに嫌われてしまったのではないかと不安を募らせる自分が右往左往している。
それはゆえに自らを『浪人』として認めるに等しいはず。
家康に捨てられたときとでは全く考えられないことだ。
何かが自分の中で変わろうとしている。
それが源九郎にとって良いことなのか、悪いことなのか、今はまだわからない。


