驚いたようにとよが見上げようと体勢を戻そうとすると、源九郎はぐりぐりと髪の毛をかき回した。
「あ、あわわっ」
源九郎の力に負けて、とよは頭を上げることはできなかった。
「また作ってくれな!」
そう言って、今度こそ源九郎は玄関を出ていった。
ガタンと戸が閉まる音を聞いてから、とよは顔が赤くなるのがわかった。
源九郎が外へ出てからだったことが幸いだろうか、それと同時にうるさいくらい胸の鼓動が聞こえてくる。
「私…………、源九郎さまを────」
婚儀相手を避けるあまりに、彼に惹かれているのだろうか。
源九郎の言葉はとよの底に流れ込んでくるようだった。
もし、貴方が良いというなら───
そんな可能性の低いことを望んでしまう自分がおこがましい気がする。
「…けれど、私……────」
収まることを知らない鼓動は更に早さを増していく。
その高鳴りを感じるために胸に手をあてたとよはまだ源九郎が出ていった戸を見つめるのであった。


