彼の右手には先端の尖った金属片がある長い槍を手にしていた。
そのまま玄関へと向かう男の後ろでとよは顎をガクガクと震えさせた。
「まさか………!」
自分が伝えた女を殺しに行くとでもいうのか。
考えておく、という言葉はその女を抱く抱かないの問題ではなく、殺すか否かだったというのか。
─────私は、そんなことをして欲しくて言ったんじゃないのにっ…!
咄嗟にとよは駆け出していた。
玄関口で腰掛けて草鞋(わらじ)を履いているあの男の背が見えた。
とよは恐怖心を歯を食い縛ることで抑えつけ、駆けていく勢いで男の背中に飛び込んだ。
「お待ち下さいっ…!」
しっかりと着物を掴み、これ以上彼が進むことを拒んだ。
「なっ。………とよじゃねぇか」
「あの人は生きております!どうか、どうか………殺さないでぇっ!」
たとえ身体を売っていたとしても、彼女は生きている。
必死に、生きているのだ。
そんな彼女を殺してはならない。
とよの瞳からはまたもや涙が溢れてきていた。
もう器で受け止められず、大粒の涙が流れる。


