────みながみな、おかしいのです。
台所に着いたときには涙で溢れていた。
父はもちろん、他の誰にも見せない涙はこのように、いつも誰もいないところで出てくる。
一人という孤独がかえって安心感をもたらすのだろう。
「……………うっ…ううっ」
嗚咽混じりでとよは釜の米を握る。
艶のある白い米を握っていると、指の間を雫がすりぬけていく。
─────いけない。お客様に出すものなのに。
どんな人でもお客様と名のつく者にはそれ相応の待遇をしなければならない。
これは父から譲り受けた信念だった。
これを守らなければと、いつも心がけているとよであったが、この時ばかりは流れる涙が止まらない。
それどころか、
────あの方なら、この握り飯でも許して下さるのではないかしら。
そんな根拠もないことを思ってしまうのだった。
────
──────
作り終えた大きな二つの握り飯を小さな寝息を立てた源九郎の枕許にそっと置く。
そしてそのまま何も言わずに部屋をあとにした。


