とよは見たかぎりでは源九郎とさして年齢は違わないようだ。
ならば親が婚儀の話を持ち出すのは普通の話だ。
むしろ、遅いほどだ。
源九郎は二十あたりになるが、この年で未婚の女はそうそういない。
男でさえ、祝言を挙げる者が多いのだ。
さすがにこの亭主が心配するのも無理はない。
「──────…では、こちらの部屋をお使い下さいませ」
ご丁寧に亭主は部屋まで案内してくれた。
襖を開けると新しくした畳の柔らかな匂いが鼻をかすめた。
「お、畳が新しいんだな」
「はい。先日替えたばかりですので、寝るのに苦しくはないかと」
「んなこと俺は気にしないぜ。しかも、畳が新しくないと寝れねぇって、どれだけ神経質なんだよそいつ」
源九郎の陽のような笑顔に亭主も胸を撫で下ろしたように、たしかに、と笑みをこぼした。


