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源九郎が奥州の城下に着く頃には日が傾いてきていた。
彼は赤く染まった城下町を目を細めながら見つめる。
「……とりあえず、宿屋を探すか」
ここは三河よりも盛えている。
一目見て、そう思った。
商売人も町人もみながみな白い歯を見せて笑いあっている。
これも城主である伊達政宗の影響なのかと思うと感嘆せざるを得ない。
これが浪人にされてしまう自分と天下を志す者との違いだと思い知らされるのが悔しかった。
城下を少し歩いたところで『宿』と書かれた看板を掲げる長屋があった。
ちょうどいぃな、と先程の沈んだ気持ちを放って戸に手をかけたとき、
「いつになったらわかってくれるんだ!お前にはもう、嫁ぐ以外の選択肢はないんだぞ!」
何やら最悪の機会に出くわしてしまったらしい。
怒鳴った男の声は怒りを越えて、呆れにも聞こえた。
「いいえ。とよは嫁ぎません。まだこの宿屋を手伝います」
自分を『とよ』と名乗る女は怒鳴る男と比べて明らかに冷静だ。
凛として響く声色にその決意の深さを感じた。


