12月半ばの午後5時30分。

今は保育園から歳の離れた弟を迎えに行った帰り道。
小さく息を吐くと白かった。

真冬で夕方、もう気温は5度も無いためだろう。

隣を歩いている弟、未嗣をチラリ盗み見ると彼はマフラーも手袋もしていなかった。

ジャンパーだけと見るからに薄着なため頬や耳、鼻まで真っ赤にして私の隣をちょこちょこと歩いている。


「未嗣」


小さな彼の小さな肩が、小さく揺れる。


「マフラーとかは?」

「おうちに、わすれた」


舌っ足らずで呟くように応え、見上げてくる。

上目使いの瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。

嫌われたかな?少し苦笑いをして足を止め、彼の目線に合うようにしゃがむ。



私は自分の手袋を外し、困ったようにハの字に眉を下げた彼の手を包み込む。

指先まで冷えきった手に少し驚いた。


「気付かった私も悪いけど、こういうことはきちんと言って?家族でしょ?」

泣きそうな彼を抱き締め、私のマフラーを彼に巻き、抱き上げる。

軽い体に少し驚きながらも歩みを進める。

冷たい彼の体を暖めるように強く抱き締め、星が瞬き始めた空を見上げる。

肩から聞こえる泣き声は聞かなかったことにして。