窓の外は
女は落ちたのか?
さっきまで居た女の姿は消えて
普段と変わらない景色が広がる
「新、これ…」
千紘は
片手でハンドルを持って
ポケットから何かを出し
結城に手渡す
『え?』
何これ?
千紘に手渡されたのは小さな缶の箱で
「それ、開けて」
俺は言われた通り缶の箱を開ける。
『……。』
箱を開けると同時に広がる
線香の様な匂い
「その箱に入ってるのは香(お香)の粉」
『これが何…』
「それを、左手の真ん中の指で香を少しだけ取って右手の手首に付けろ」
『え?』
「悪除けだから良いから言う通りにしろ… 掃除が大変だから絶対こぼすなよ?」
千紘に言われた通り
左の真ん中の指で
少しだけ香を取り
右の手首に付ける
『付けた…けど?』
「じゃあ、左の手首に香が付く様に左の手首を右の手首とこすり合わせて、両手首を自分の鼻の前に持って行って匂いを嗅いで」
『……。』
「よし、体全体に匂いが行き渡る…そんなイメージで匂いを嗅いだ後、今度は自分の体の内側じゃなく外側…」
『外側?』
「全身、手首に付いた香の匂いが付く様に自分の体の周りに結界を張る様なイメージで手を動かして」


