『千紘…』
「新、今から20秒間窓と真逆の方を向いてろ!」
『え?』
" 窓と真逆の方を向いてろ "
そう言った千紘は
運転席側のボタンから
助手席の窓を閉める。
ゆっくり
ゆっくり
自動で閉まって行く窓
「……。」
それでも女は
窓を掴んだまま離そうとしない
このままじゃ
女の指が車の窓に
『…っ』
慌てて視線を窓から
自分の膝に反らした
その瞬間
ボトッ
ボトボトボトッ
異様な音と共に膝の上に
女の指が10本落ちて来た
『ひ、ひっ…』
落ちて来た女の指は
俺の膝の上で原型が無くなり
突然ドロドロに溶け始める…
『ゔっ…』
" 気持ち悪い "
そう思いながら口を押さえる
突然
誰かが囁く声が聞こえ
周りを見回す結城。
「新、大丈夫か?」
『あ、あぁ…』
窓にべっとり付いてた黒服の女の血は
いつの間にか雨水によって
綺麗に流れ落ちていて…
「その服、捨てて新しいの買えよ」
『…そうする』
今の声一体何だったんだ?
俺は恐る恐る
窓の外を見た


